中学校道徳教科書採択にあたっての要請

  • 2018.07.11 Wednesday
  • 21:17

2018年7月11日

 

杉並区教育委員会   

教育長     様  

 

                中学校道徳教科書採択にあたっての要請                      

                                                                    

                                           杉並の教育を考えるみんなの会                         

 

  日頃より杉並の子どもと教育に深く心を砕かれておられることに敬意を表します。

昨年度の小学校に続き中学校でも、「道徳」教科化により検定が行われ、2019年度から使用する「特別の教科 道徳」の中学校教科書の採択が行われます。私たちは、これまでの教科書採択で、特定の教科書を支持したり、排除したりする立場はとっていません。

  ただし、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)や、そこから分かれた日本教育再生機構(「再生機構」)・改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会(「教科書改善の会」)の扶桑社版=育鵬社版・自由社版教科書(以下、「つくる会」系教科書)は例外です。「つくる会」や「再生機構」・「教科書改善の会」は、他社教科書を「自虐史観」「反日史観」などと誹謗し、日本国憲法を敵視し、日本の過去の戦争を正当化する「戦争肯定」の教科書です。天皇中心の日本を回顧的に追い求め、歴史的事実を歪曲するという点で、私たちは育鵬社版など「つくる会」系教科書の採択に対してだけは反対してきました。

 今年の中学校道徳教科書採択にあたっても、私たちは前述のような立場で採択を迎えようと考え、各地での教科書展示で閲覧と意見を書くということを行ってきました。以下、検定合格した8社の教科書を閲覧し、話し合った上で、要請します。

 

1.日本教科書の道徳教科書だけは、子どもたちの手に渡さないでください。

 

  2017年度に中学校道徳教科書の検定を申請したのは、東京書籍、学校図書、教育出版、光村図書、日本文教出版、学研みらい、廣済堂あかつき、日本教科書の8社で、すべて検定合格しました。日本教科書以外は小学校道徳教科書を発行した教科書会社です。

 新規参入の日本教科書株式会社は、安倍首相のブレーンとして知られる八木秀次・麗澤大学教授(日本教育再生機構理事長)らが2016年4月に八木氏が代表取締役社長に就任して設立しました。設立時の所在地は日本教育再生機構の事務所と同じ場所にありました。八木氏は、道徳の教科化などを提言した安倍首相直属の教育再生実行会議の有識者委員で、「道徳の教科化」を推進した中心人物です。八木氏は16年9月に日本教科書の代表取締役を退任し、その後の社長には晋遊舎の代表取締役会長の武田義輝氏が就任しています。晋遊舎は『マンガ嫌韓流』や元「在特会」会長の櫻井誠氏の本などヘイト本を多く出版している出版社です。日本教科書の現在の所在地は、千代田区神田神保町の晋遊舎の中にあり、晋遊舎の「子会社」と言えます。日本教科書は、事実上「つくる会系」教科書と言うことができます。

 

  内容から見ても、日本教科書は完成度の低い、復古主義・国家主義的内容です。道徳の学習指導要領は、その内容項目を、A「自分自身に関すること」、B「人との関わりに…」、C「集団や社会との関わりに…」、D「生命や自然、崇高なものとの関わり…」という4つの大項目に分類して規定しています。

 他社はこのA・B・C・Dに属する内容を適宜織り交ぜて配列し1冊を編集していますが、日本教科書は、各学年ともにA・B・C・Dを1ページから順番に扱っています。そのため、例えば1学期には「A」の内容だけを学習することになります。教科書づくりの「イロハ」を理解していない編集であることが明らかです。しかも、検定意見数が飛び抜けて多く、その多くが字句の間違いなどで、完成度が極めて低い教科書です。   

 

  さらに、使われている教材が編集部で作文したものが多く、無理矢理に教えたい「偉人」に結びつける展開のものがあります。

例えば、吉田松陰を登場させるために、中学生が陸上競技の走り込み途中で松下村塾の前を通る話などがその一例です(中1)。

また、新潟県長岡市がハワイと姉妹都市提携をして真珠湾で花火を打ち上げるという「白菊」(中2)という教材の最後に何らの必然性もなく安倍晋三首相の真珠湾での演説を1ページ分載せています。現役政治家の教科書記載は公平性からも配慮が必要なところでしょう。

   また、「道徳」とはかけ離れた内容もあります。「14歳の責任」では、14歳からは刑事責任能力が問われると罰則を強調します。イジメで被害生徒を自殺させた場合、少年院送り、出所しても地元では針のむしろ、賠償金の支払いは一生続くと脅しつけるような内容です。これが「心を育てる道徳教育」といえるのでしょうか?少年法は社会科公民の刑法のところで扱いますが、こんな脅迫まがいの教え方はしません。

 

 さらに、この教材の後には「もっと知りたい」として「割れ窓理論」が紹介されています。これは「犯罪学者」の理論で、「ゼロ・トレランス」(寛容ゼロ)の機械的懲戒処分の論理です。これは犯罪阻止の論理であり、14歳の「道徳」で教える内容ではありません。これでは脅しでしかありません。例をあげればきりがないのですが、この日本教科書の「道徳教科書」は、未来をになう子どもたちを育てるという視座からはかけ離れたものと言えます。

 

 2.子どもの内心を数値で「自己評価」させ、特定の価値観をおしつけるような教科書は採択しないでください。

 

 いずれの教科書も巻末に「自己評価」「ふりかえり」のページがあります。

道徳の教科化にあたって文科省は、数値による評価はしないとしてきました。ところが中学校道徳教科書は、8社中、東京書籍・教育出版・日本文教出版・廣済堂あかつき・日本教科書の5社が生徒に4〜5段階で自己評価させる欄を設けています。   

   子どもの内心の「愛国心」などを数値で「自己評価」させるような教科書ではなく、自らの考えや、行動について、自由に記載でき、はじめから結論を押しつけるようなことはしない教科書を選んでください。  

  なお、この自己評価に関しても、日本教科書が最も露骨です。

「中学生で身につけたい22の心」として、「礼儀を大切にし、時と場に応じた言動を判断できる心」「国を愛し、伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心」「日本人としての自覚をもち、世界の平和や人類の幸福に貢献しようとする心」などを4段階のレベルで評価させる内容です。他社と比べても子どもにふさわしくない内容を多く含んでいる教科書です。

 

  私たちは、「道徳」とは、子どもたちが周りにある様々な人間関係の中から、自ら考え、みんなで話し合い、行動の規範を見つけ出す学びだと考えています。押しつけの中からは何も生まれませんし、覚えこむ学びでもないはずです。

  初めから「こうあるべき」という押しつけの「道徳」は子どもたちの成長に役立つものとは思えません。

  中学生は自ら多様な考えを見聞きし、自ら考える力を備えています。子どもたちのこの力を引き出すことこそ学びの本質でしょう。この点からも、特定の価値観を押し付けることのない教科書、教育を望みます。

 

  また、中学生といえば、「内申点」という点からも「評価」には敏感です。「評価」により子どもの心を縛ることのないことを強く願います。いずれの教科書も道徳授業時数に比較して、文章も長く総ての内容について授業で取り上げることは困難と思われます。生徒の実態に応じて学校で裁量できるよう形式的な押し付けは避けてください。

 

  以上のような観点から、今回の道徳教科書の採択にあたって、教育委員の皆様が、深慮を重ねて採択にあたられることを心から願い、要請する次第です。       

                                                                                    以上                         

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