小学校道徳教科書採択にあたっての要請

2017.07.11 Tuesday 16:47
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    ☆杉並の教育を考えるみんなの会では以下の要請書を杉並区教育委員会に提出し、要請しました。

     

     

    杉並区教育委員会
    教育長 井出 隆安様
    教育長職務代理者 對馬 初音様
    教育委員 久保田 福美様
    教育委員 伊井 希志子様
    教育委員 折井 麻美子様

                                  小学校道徳教科書採択にあたっての要請
                                                                                       杉並の教育を考えるみんなの会
                                                                                       代表者:
                                                                                       住所:〒
                                                                                       電話:


    日頃より杉並の子どもと教育に深く心を砕かれておられることに敬意を表します。
    今回、「道徳」教科化により戦後初めて検定が行われ、2018年度から使用する「特別の教科 道徳」の小学校教科書の採択が行われます。私たちは、これまでの教科書採択で、特定の教科書を支持したり、排除する立場はとっていません。ただし、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)や、そこから分かれた日本教育再生機構(「再生機構」)・改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会(「教科書改善の会」)の扶桑社版=育鵬社版・自由社版教科書(以下、「つくる会」系教科書)は例外です。「つくる会」や「再生機構」・「教科書改善の会」は、他社教科書を「自虐史観」「反日史観」などと誹謗し、日本国憲法を敵視し、日本の過去の戦争を正当化する「戦争肯定」の教科書です。そのため、天皇中心の日本を回顧的に追い求め、歴史的事実を歪曲します。この点で、私たちは育鵬社版など「つくる会」系教科書の採択に対してだけは反対してきました。

     

    今年の小学校道徳教科書採択にあたっても、私たちは前述のような立場で採択を迎えようと考え、各地での教科書展示で閲覧と意見を書くということを行ってきました。ところが、検定合格した8社66点の教科書を閲覧し、話し合った結果、教育出版の道徳教科書にだけは、子どもたちの手に渡してはならないと考えるに至り、採択にあたる皆さんに意見を申し述べることとしました。その理由は以下の通りです。

     

    第一に、どの教科書も学習指導要領と検定の縛りのためでしょう、同じような内容という印象が強いものになっています。加えて、戦後はじめての道徳教科書の検定ということで、各社が不合格にならないためか、同じ題材を多用していることも特徴です。しかし詳細に見ると、その中にあって、教育出版の教科書だけは、次のような点で、他社版と異なる内容・表現が多々あり、違和感を持たざるを得ませんでした。その中のいくつかを挙げると、
     2年生で扱っている「国旗・国歌」が他社と比べても異常に大きく偏った取り上げ方をしています。「君が代」の歌詞の説明が「日本の平和が長く続くようにとの願いだ」と虚偽の説明をし、君が代斉唱時の起立・礼の行動まで写真入りで指示しています。オリンピック・パラリンピックで使われる旗や歌は選手団の旗・歌(オリンピック憲章)なのに、これを意図的に混同して「国旗・国歌」と記述しています。
     5年生の教材「下町ボブスレー」で安倍首相の写真を載せ、5年生の「一人はみんなのために・・」で元ラグビー選手を扱った教材で東大阪市の野田市長の写真も載せています。どちらも掲載する必然性のない写真です。現役政治家の教科書掲載は、「義務教育諸学校教科用図書検定基準」の「第2章 教科共通の条件」の2の「(8)特定の個人、団体などについて、その活動に対する政治的又は宗教的な援助や助長となるおそれのあるところはなく、また、その権利や利益を侵害するおそれのあるところはないこと」に明白に違反し、教育の政治的中立を侵す重大な問題です。
      教育出版だけが、道徳のお手本にするべきとして紹介する人物に、経済界での成功者を多く掲載しています。豊田喜一郎、松下幸之助、本田宗一郎、山葉寅楠などです。これまで社会科や国語・理科などの教科書では、上記検定基準の「(7)特定の営利企業、商品などの宣伝や非難になる恐れのあるところはないこと」を根拠に、特定企業名の掲載は必ず検定で禁止されてきました。それとも矛盾するものです。
      「正しいあいさつのしかた」を小学校1年、2年と続けて指示しています。子どもたちの行為、行動を型にはめる規制・強制が至る所に強く出ています。また、「どれが正しいおじぎのしかたか」など、戦前の修身と同じようなおじぎをさせる「しつけ」・「礼儀」の教材が多く取り入れられています。

     

    第二に、ではなぜ、教育出版の小学校道徳教科書が他社と違う多くの問題点があるのか?
    この教科書の編著者を調べてみて、その理由がわかりました。
    育鵬社の中学校社会科教科書をつくり採択活動を行ってきた日本教育再生機構(「再生機構」、八木秀次理事長)の道徳教育の中心メンバーが、教育出版の監修・編集執筆者に名を連ねています。まず、監修者の貝塚茂樹氏(武蔵野大学教授)と柳沼良太氏(岐阜大学大学院准教授)があげられます。貝塚氏は「再生機構」がつくり、育鵬社から出版した道徳教科書のパイロット版『13歳からの道徳教科書』の中心的な編著者です。貝塚氏は下村博文文科相(当時)が、13年に道徳の教科化に向けて設置した道徳教育の充実に関する懇談会の中心的なメンバーで、「再生機構」の理事、日本会議の関係者です。柳沼氏は、貝塚氏とともに小学校道徳教科書のパイロット版『はじめての道徳教科書』(育鵬社)の編著者を務めた物です。この二人と八木秀次氏が、「再生機構」の機関誌『教育再生』(2013年12月号)で道徳教育とその教科化を推進する鼎談をしています。
    この二人以外にも、育鵬社発行の『学校で学びたい日本の偉人』の著者の一人である木原一彰氏(鳥取市立世紀小学校教諭)や武蔵村山市立第八小学校・校長牧一彦氏、主任教諭・小山直之氏、同嶺井勇哉氏の計3人も教育出版道徳教科書の著者に入っています。武蔵村山市には貝塚氏が道徳教育の指導にはいっています。同じ小学校の教員3名が著者に入るのは異例なことです。

     

    第三に、最近、小学校道徳教科書採択で、安倍晋三首相に近い赤池誠章衆院議員による教育出版の採択を支援・推進する動きが表面化しています。赤池氏は、第2次安倍政権と第3次安倍政権で文部科学政務官を務め、現在は参議員自民党の文教科学委員会委員長です。
    今年の道徳教科書採択に当たって、赤池氏は各社道徳教科書には、愛国心にそった教材がほとんどないと批判し、そのなかで唯一教育出版だけが及第点だとして、自身がつくった教科書の採点表では、教育出版に他社本の倍以上の評価点をつけました。そして教科書展示会へ参加し意見を書くよう呼びかけています。赤池氏は、日本会議国会議員懇談会(「日本会議議連」)の事務局次長で、日本の前途と歴史教育を考える議員の会(「教科書議連」)、神道政治連盟国会議員懇談会、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会、創生「日本」、新憲法制定議員同盟、日教組問題を究明し、教育正常化実現に向け教育現場の実態を把握する議員の会などの右翼議連に所属する議員です。
    「再生機構」・「教科書改善の会」の育鵬社版中学校教科書を支援し、採択を推進してきた赤池議員が教育出版の道徳教科書を絶賛し採択を支援しているのは、「再生機構」が、この教科書を育鵬社版の代役として位置付けているからと考えられます。

     

    以上のような点から、教育出版の小学校道徳教科書は、ある意図を持った人々による編纂であり、「つくる会」系教科書と同じようなものと考えざるを得ないという結論に至りました。

     

    私たちは、「道徳」という教科は、子どもたちが周りにある様々な人間関係の中から、自ら考え、みんなで話し合い、行動の規範を見つけ出す学びだと考えています。押しつけの中からは何も生まれませんし、覚えこむ学びでもないはずです。初めから「こうあるべき」という押しつけの「道徳」は子どもたちの成長に役立つものとは思われません。

            

    以上のような観点から、今回の道徳教科書の採択にあたって、教育委員の皆様が、杉並区でかつて教科書採択時に犯した誤りを再び繰り返すことのないように、深慮を重ねて採択にあたることを心から願い要請する次第です。

     

                                          2017年7月 11日
     

    category:つくる会教科書 | by:sugiminacomments(0) | -
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